「寄り添う」と言葉でいうのはたやすい。しかし、主人公は、安易な共感の余地を与えず、「若いがん患者」というラベルを張られることを徹底的に拒む。そして、医療者らしく、鋭く問いかける。あなたは問題が見えているか、あなたには何ができるのか、と。

清水千佳子
国立国際医療研究センター病院 がん総合診療センター 副センター長
一般社団法人 AYAがんの医療と支援のあり方研究会 理事長

自分の命の限りを伝えられたら、どう生きるだろうか?
支援がない、制度がない、行き場がない、AYA世代だったら?と、
ゆずなさんはたくさんの問いかけをくれた。
そして、いい夫婦だなあ、いい友だちだなあ、いい仲間だなあと、
あたたかい大切なことを笑顔で教えてくれている。

東ちづる俳優/一般社団法人Get in touch代表

当たり前が当たり前ではないと知り、その当たり前を取り戻す事ができた今の私が決して忘れてはいけない事を思い出させくれた映画でした。
私は人は誰しも一人では生きていけないと思っています。
それはどんなハンデがあろうとなかろうと。
必要とする事、頼りたいと思う瞬間、繋がりたいと感じる瞬間、支えたいと思う瞬間、それぞれ形は違えど必ずある。
私だからできる誰かと繋がり、支える行動をしたい。
それがきっとありのままの自分を愛する事に繋がると信じているから。

安本彩花私立恵比寿中学

強くもあり弱くもある私たちはみな、
人を支えたり支えられたりしながら生老病死の一生を歩く。
この作品が〝若い女性の闘病記〟を超えて心に響くのは、
ひとりの中で、まただれかとの間で役割交代しながらケアを紡いでいく尊さ、
役割の対等性を彼女の生きる姿を通じて教えられたから。

寺田和代ライター

“1日24時間”という誰がどう見ても当たり前かつ常識化した数字。
その当たり前に過ぎていく時間をどのように使い、どう受け止めるのか?
そのプランニングはそれぞれで、誰にも奪うことのできない“人生の証明”だと思っています。

矢方美紀声優・タレント

ノーマルな日常が立ち行かなくなったときに発揮される人間の生きる力を、しなやかに見つめつづけてきた大宮浩一監督。そのまなざしのもと、このあまりに痛切で、柔らかく、優しい「生の再発見の記録」は作られた。

三浦哲哉映画研究者

がん患者は、悲劇のヒロインでも、病に打ち勝つヒーローでもない。

わたしは鈴木ゆずなさんと同世代の28歳で乳がんになりました。巷の映画は、がん患者を「悲劇のヒロイン」や「病に打ち勝つヒーロー」のように描くことがしばしばあります。しかし実際は、治療も経過も多種多様。本作は、ゆずなさんの人柄によって、しなやかで誠実に、一人の患者のありのままの姿を映しています。誰もががんになる可能性があり、誰もがケアをする可能性がある。さまざまな立場で、思いを馳せてみてください。

二宮みさきオンラインがん相談サービス CancerWith 運営/AYA世代がん経験者

ドキュメンタリーでありつつ、生と死を描いて虚空の極までのぼりつめている。
それでいて地上に生き続ける人々のありようが素晴らしい。
監督だけでなく、撮影、編集、録音、集合体の力。
ただただ、映っているものが、とてつもなく愛おしい。

瀬々敬久映画監督

ゆずなさんと、かのじょを取り巻く人びとの姿は、「答えのない大切な時間」へのめいっぱいの〈応答〉だったように思う。ケアは紡ぐもの。人と人を紡いでいくもの。ゆずなさんは、ありのままの姿で、そのことを伝えてくれている。

有住航日本基督教団 下落合教会 牧師

人は弱い。ひとりでは絶対に生きていけない。映画を観ると改めて痛切に感じます。
では、自分が弱さに直面していない時、まわりの人の弱さに目線を合わせようとできているか。
自分が弱さに直面した時、ゆずなさんがしたように、それをありのまま受け入れて甘える勇気を持つことができるのか。
それらが交差してケアが紡がれるのだと思うけれど、それって一つ一つがとてもすごいことです。そんなさまざまを実感しました。

星野概念精神科医 など

タイトルが胸に沁みる。
ケアをする側になったり、される側に変わったりしながら、
人は人生を進め、人と関わる。
そうして社会を紡いでいく。
今、がんと共に生きる人がとても増えているから、
がんという言葉は強く伝わり過ぎるきらいがある。
でも、罹患の仕方はひとりひとり違っていて、
ケアの方法も個々別々。
多彩な糸で社会は美しく織られていくのだろう。

山崎ナオコーラ作家

制度の網からこぼれている人たち、これからこぼれてしまう人は沢山いる。大きな病院でケアする側から、小さな輪の中でケアされる側へまわったゆずなさんの体験とそこからの発見は、現状を変えるヒントに満ちている。

寺尾紗穂文筆家・音楽家

同じ時期にがんと向き合っていたゆずなさん。
「ステージ4でも治るとサラッと言う芸能人がいる」
ごめんなさい、恐らく私です。
天に召される人、生き延びる人、その境界線は誰が引くのでしょう。
それでも、ゆずなさんが前を向いて歩み続けることができたのは、ご主人を始め周囲の皆さんの明るいサポート、「ケアの力」だと確信しました。
そして価値ある、かけがえのない記録になりました。
ゆずなさん、あなたはこの作品とともに生き続けるのですね。

笠井信輔悪性リンパ腫ステージ4経験者、アナウンサー

何ができるか、何をなしたかよりも、人は存在しているだけで貴いのだ。生きるとは、どうにかして、互いにそれを確かめ合うことなのかもしれない。誰かを深く愛する。それは悲しみを育むことにほかならない。しかしそれは耐えがたい悲しみを、朽ちることなき愛しみに変じる営みになる。人生の深みを、静かに、だが確かに照らす稀有なる作品だと思った。

若松英輔批評家・随筆家